特定技能「介護」に必要な試験とは?試験の概要から学習方法まで解説

本記事の概要

国内のあらゆる産業で人材不足がさけばれる中、外国人材の積極的な活用を掲げて、政府が2019年に創設した「特定技能制度」。とりわけ介護業界の人材不足解消にも期待が集まっています。そして、新型コロナウイルスによる水際対策の緩和もあり、特定技能を活かして介護分野の就労を希望する外国人が増えています。介護事業者にとっては人材不足解消のチャンスといえるでしょう。

ただし、特定技能の資格を得るには、所定の試験に合格することが必須です。特定技能人材の受け入れたい場合、事業者は試験概要について正しく理解しておく必要があります。 そこで本記事では、特定技能「介護」の試験制度について、試験の概要や合格率、学習方法まで詳しく解説します。特定技能外国人の採用をご検討されている介護事業者様はぜひご覧ください。

特定技能「介護」に関する基礎知識

人材不足が深刻な産業分野で、専門的な技能・知識を有する外国人材の受け入れが可能となる「特定技能制度」は、介護分野も該当します。

特定技能制度を活用すれば、外国人材はあらゆる介護業務に携わることができます。上手に活用すれば、人材が思うように集まらないサービス業態や地方エリアをはじめ、人材不足の解消が期待できるでしょう。

ただし、訪問介護など対象外のサービスや介護業態もあります。対象施設に関しては以下をご覧ください。

参考:介護分野の1号特定技能外国人を受け入れる対象施設について

特定技能資格の取得要件

介護分野における特定技能資格の取得要件としては、以下の試験に合格している方が対象です。

  1. 介護技能評価試験
  2. 国際交流基金 日本語基礎テスト(または日本語能力試験N4以上)
  3. 介護日本語評価試験

参照:介護分野における特定技能外国人の受入れについて(厚生労働省)

また、合格しただけでは在留資格を得られません。試験合格後に「地方出入国在留管理局」に出向き、就労ビザ(在留ビザ)の申請が必要です。申請には書類作成も含めて期間を要するため、計画的に進めるようにしましょう。

特定技能資格試験の受験資格

介護分野における特定技能資格試験の受験資格は、次のいずれかを満たす方が対象です。

  1. 17歳以上の者(国籍がインドネシアの方は18歳以上)
  2. ただし、日本国内で実施する試験を受ける場合は、在留資格を持つ17歳以上の者(退去強制令書の円滑な執行に協力するとして、法務大臣が告示で定める外国政府または地域の権限ある機関の発行した旅券を所持している者に限る)

試験は、海外および国内で受験できます。国内の場合は47都道府県それぞれで受験できますので、事業所から最寄りの試験会場で受験しましょう。

特定技能資格試験の免除要件

介護分野における特定技能資格を取得する際、試験の合格が対象となりますが、中には試験が免除になるケースもあります。具体的には、以下に該当する外国人は免除となります。

  1. 介護分野の第2号技能実習を修了した者
  2. 介護福祉士養成施設を修了した者
  3. EPA介護福祉士候補者として在留期間を満了した者

これらいずれかに該当する場合は、技能試験・日本語試験ともに免除されます。そのため、技能実習生として受け入れた外国人材を教育・育成し、試験を免除させるといったことも可能です。

特定技能「介護」の試験内容

介護分野における特定技能資格では、技能試験(介護技能評価試験)と、日本語試験(介護日本語評価試験および、国際交流基金 日本語基礎テスト)の受験が必要です。ここでは、それぞれの試験内容について解説します。

介護技能評価試験(技術試験)

介護技能評価試験は、介護業務の基盤となる能力や考え方に基づき、利用者の心身の状況に応じた介護を一定程度実践できるレベルを測定する試験です。

問題数・試験時間・全45問(学科試験:40問) ・試験時間:60分
試験科目・介護の基本:10問
・こころとからだのしくみ:6問
・コミュニケーション技術:4問
・生活支援技術:20問(実技試験:5問)
・判断等試験等の形式による実技試験課題を出題
実施方法コンピューター・ベースド・テスティング(CBT)方式
受験手数料1,000円程度
合格基準問題の総得点の60%以上
サンプル問題介護技能評価試験サンプル問題

参照:介護分野における特定技能外国人の受入れについて(厚生労働省)

介護日本語評価試験(日本語試験)

介護日本語評価試験は、介護現場で実務にあたるうえで、コミュニケーションに支障のない程度の日本語能力を測定する試験です。

問題数・試験時間・全15問 ・試験時間:30分
試験科目・介護のことば(5問)
・介護の会話・声かけ(5問)
・介護の文書(5問)
実施方法コンピューター・ベースド・テスティング(CBT)方式
受験手数料1,000円程度
合格基準問題の総得点の60%以上
サンプル問題介護日本語評価試験サンプル問題

参照:介護分野における特定技能外国人の受入れについて(厚生労働省)

国際交流基金 日本語基礎テスト(JFT-Basic)

JFT-Basicは、就労のために来日する外国人が、社会生活を営むうえで必要な日本語能力を測定する日本語試験です。日本国内および海外のプロメトリックテストセンターで受験できます。

問題数・試験時間・約50問 ・試験時間:60分
試験科目・文字と語彙(約12問)
・会話と表現(約12問)
・聴解(約12問) ・読解(約12問)
実施方法コンピューター・ベースド・テスティング(CBT)方式
受験手数料7,000円
合格基準総合得点が判定基準点(200点)以上
サンプル問題JFT-Basicサンプル問題

参照:国際交流基金 日本語基礎テスト(JFT-Basic)

日本語能力試験(JLPT)

日本語能力試験(JLPT)は、日本語を母語としない外国人の日本語能力を測定する試験です。N1〜N5まで5つのレベルに分かれており、一番難しいのがN1です。

試験科目に関しても、レベルごとに異なるため、レベルに合わせた学習・受験対策が必要です。各介護分野における特定技能資格要件では、N4以上の認定が必須となります。

以下はN4の試験科目と問題の構成です。

試験科目・試験時間・言語知識(文字・語彙):25分 ・言語知識(文法)・読解:55分 ・聴解:35分
実施方法コンピューター・ベースド・テスティング(CBT)方式
受験手数料6,500円
合格基準180点満点中90点以上かつ、各パートで基準点以上を満たすこと
サンプル問題JLPTサンプル問題(N4)

参照:日本語能力試験(JLPT)

特定技能評価試験の日程

介護技能評価試験および、介護日本語評価試験は国内・海外で受験可能です。とりわけ国内では、47都道府県で行われているので、地方の方でも無理なく受験できます。基本的に平日は毎日開催されており、なかには土日に受験できる場所もあります。

海外では、フィリピン・カンボジア・インドネシア・ネパール・タイ・モンゴル・ミャンマーで実施されています。開催日程はこちらで公開されていますので、ブックマークをしておき常に最新情報をチェックできるようにしましょう。

特定技能評価試験の申込み方法

介護技能評価試験・介護日本語評価試験は、プロメトリック株式会社が実施主体となって運営しており、受験申し込み時にはプロメトリックIDの取得が必要です。国内試験の場合は以下の申込み手順を参考にしてください。

参照:介護技能評価試験・介護日本語評価試験 国内試験 申込手順

試験の申込みは、2か月後(60日後)まで可能です。ただし、一度受験した場合45日間は次回の受験予約ができません。受験後1カ月以内を目安に結果通知が届きますので、予約サイトのマイページから合否を確認できます。 その他、国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)、日本語能力試験(JLPT)もそれぞれ申込み方法が異なります。詳しくは、各サイトをご覧ください。

<参照>

試験実施場所別の合格率について

厚生労働省が公表している2021年3月(ミャンマーのみ2021年2月)の試験結果を以下の表にまとめました。

介護技能評価試験、介護日本語評価試験ともに、国内受験が圧倒的に多い状況です。この要因は、新型コロナウイルス感染症の影響により、国内に居住する留学生や失業した外国人の受験が増えたためと考えられます。

介護日本語評価試験でも国内受験の合格率が高くなっていますが、日本でアルバイトや学校に通っているため、日常的に日本語に触れる中で習熟度が高まったためといえるでしょう。 国によって受験者数に差がありますが、新型コロナウイルス感染症の水際対策が緩和されたことで、今後ますます受験者数および合格者数が増える見込みです。

介護技能評価試験(2021年3月受験)の合格率

試験実施場所受験者数(人)合格者数(人)合格率(%)
フィリピン28721876.0%
カンボジア9666.7%
ネパール443272.7%
インドネシア31924677.1%
モンゴル28721876.0%
ミャンマー88100.0%
タイ201890.0%
国内2,0671,38166.8%

※ミャンマーは2021年2月データ

出典:令和2年度介護技能評価試験・介護日本語評価試験実施状況報告書|厚生労働省

介護日本語評価試験(2021年3月受験)の合格率

試験実施場所受験者数(人)合格者数(人)合格率(%)
フィリピン25719776.7%
カンボジア141178.6%
ネパール484083.3%
インドネシア48339682.0%
モンゴル473778.7%
ミャンマー99100.0%
タイ171588.2%
国内1,8521,58885.7%

※ミャンマーは2021年2月データ

出典:令和2年度介護技能評価試験・介護日本語評価試験実施状況報告書|厚生労働省

特定技能試験の合格に向けた学習方法

介護技能評価試験と介護日本語評価試験に向けた対策は、「テキスト」と「サンプル問題」に取り組むことがおすすめです。

テキストに関しては、日本介護福祉会が言語別のテキストを無料公開していますので、そちらを手元に置き学習に取り組んでもらうと良いでしょう。

<学習テキスト一覧>

参照:公益社団法人 日本介護福祉会

<サンプル問題一覧>

まとめ

本記事では、特定技能「介護」の試験概要からスケジュール、学習方法まで解説しました。紹介した内容をもとに、ぜひ計画的に受け入れを進めていきましょう。

一方、介護分野における特定技能の資格を得るには、試験合格だけでは不十分です。最終的には、試験合格後に「地方出入国在留管理局」にて、就労ビザ(在留ビザ)の申請が必要です。注意すべきなのは、特定技能の申請は、他の在留資格と比べて、提出書類が多いことです。

もし、書類作成が間に合わない場合や書き方に迷う場合は、専門機関に相談することがおすすめです。私たち、さむらい行政書士法人では、介護分野における特定技能外国人の受入れに関する相談から実務支援まで、ワンストップサービスを提供しています。介護職の外国人材を増やしていきたい方はぜひご相談ください。

まずは気軽にご相談ください TEL:03-5830-7919 受付時間9:00~20:00 さむらい行政書士法人 まずは気軽にご相談ください TEL:03-5830-7919 受付時間9:00~20:00 さむらい行政書士法人

03-5830-7919

メールでのお問い合わせ メールでのお問い合わせ