介護分野で特定技能ビザを取得するには?外国人・受入れ機関の要件を解説

本記事の概要

「介護分野で特定技能ビザを取得するには何から始めたら良い?」「介護分野の特定技能ビザを取得する際の注意点を知りたい。」このような疑問をお持ちではありませんか。

特定技能ビザとは、2019年4月に政府が施行した就労ビザのことです。人手不足が深刻化している14分野において、一定の専門性や技能を持つ外国人材を即戦力として受け入れることができます。とりわけ介護分野における特定技能ビザは、介護事業所の人材不足解消に期待されています。 本記事では、介護分野における特定技能ビザの取得について、取得要件や必要書類、取得の時の注意点まで詳しく解説します。特定技能ビザの活用を検討中の介護事業所様はぜひ参考にしてください。

在留ビザ・就労ビザと、ビザ(査証)の違い

そもそも、外国人が日本で働くときには「就労ビザ」が必要です。この就労ビザとはあくまでも慣用表現であり、出入国管理及び難民認定法(以下、入管法)で規定されている、「ビザ」とは意味が異なるため注意が必要です。

入管法で規定されている正確な意味でのビザとは査証のことです。つまり、国家が自国民以外に対して、その人物が所持するパスポートが有効であり、かつその人物が入国しても問題ないことを示す証明書です。 世間一般では、外国人が日本に滞在できる在留資格を「ビザ」、就労が可能な在留資格を「就労ビザ」と呼ぶことが多いのですが、本来のビザ(査証)とは異なるため混同しないようにしましょう。本記事では便宜上、在留資格を「ビザ」、就労が可能な在留資格を「就労ビザ」として解説していきます。

介護分野における外国人の受入れ制度とは

介護事業所が外国人の雇用を検討した場合は4つの制度があります。

  1. EPA(介護福祉士候補者)
  2. 在留資格「介護」
  3. 技能実習
  4. 特定技能「介護」

続いて、各制度の概要をそれぞれ解説します。

出典:厚生労働省「外国人介護職員の雇用に関する介護事業者向けガイドブック」

 EPA(介護福祉士候補者)

EPAは経済連携協定のことで、国と国の経済的な連携を強化し、物品やサービスの流通や投資の促進を目的としています。日本では、インドネシア・フィリピン・ベトナムとの間で結んだEPAの一環として、介護福祉士の国家資格取得を目指す候補者(外国人介護福祉士候補者)を受け入れています。

在留期間は最長4年で、期間中に国家資格に合格すれば介護福祉士として業務に従事でき、家族の滞在が可能になることや、在留期間更新の回数制限がなくなります。

在留資格「介護」

介護福祉士の資格取得条件である在留資格「介護」は、2017年9月に創設されました。主に、介護専門学校などの養成校を卒業して介護福祉士の資格取得を目指します。

一般的には、留学生として養成校に通学しながら介護のアルバイトをして国家資格試験の合格を目指す人がほとんどです。

国家資格試験に合格し、介護福祉士として業務に従事すれば、EPA同様に家族の帯同が認められるほか、在留期間更新の回数制限がなくなります。

技能実習

技能実習制度は、外国人に日本での就労を通じて技能や技術を学んでもらい、母国の経済発展に役立ててもらうための制度です。介護分野での技能実習は、入国後に日本語や生活マナー、介護の基礎となる講習を受けた上で各受入れ機関に配属されます。

配属後も1年目と3年目を終了した時点で試験を受ける必要があります。試験に合格かつ、優良認定を受けることで最長5年まで実習が可能です。

特定技能「介護」

特定技能制度は、人材不足が深刻な14業種を対象に一定の技能・専門性を持つ外国人材を雇用できる制度です。2019年4月に施行され、対象業種には介護分野も含まれています。特定技能「介護」の就労ビザを取得できるのは、技能試験と日本語試験の合格者が対象となります。

続いて、特定技能「介護」の就労ビザについてさらに詳しく解説していきます。

特定技能「介護」の就労ビザ取得状況

出入国在留管理庁の調査によると、令和4年6月末時点での特定技能「介護」の就労ビザ取得状況は以下の通りです。

<特定技能介護ビザ取得数(令和4年6月時点)>

国籍・地域人数
ベトナム4,294
インドネシア1,797
フィリピン1,308
中国449
ミャンマー1,145
カンボジア139
タイ52
ネパール896
その他331
総数10,411

参照:主な国籍・地域別 特定産業分野別 特定技能1号在留外国人数(出入国在留管理庁)

令和3年12月末時点では、特定技能介護の就労ビザ取得人数は5,155名でしたので、半年で約2倍に増えたことがわかります。とりわけ、令和4年(2022年)3月からは新型コロナウイルス感染症の水際対策も緩和されたため、今後さらに介護分野における就労ビザの取得数は増えることが見込まれます。

<令和3年6月末から令和3年12月末の推移>

参照:特定技能制度運用状況等について(出入国在留管理庁)

特定技能「介護」の就労ビザ取得要件

特定技能「介護」の就労ビザを取得するには、以下の試験の合格が条件となります。

  1. 介護技能評価試験
  2. 介護日本語評価試験
  3. 国際交流基金 日本語基礎テスト(または日本語能力試験N4以上)

参照:介護分野における特定技能外国人の受入れについて(厚生労働省)

各試験内容をそれぞれ解説します。

介護技能評価試験(技術試験)

介護技能評価試験は、介護業務に必要な能力や考え方をもとに、利用者の状況に応じた介護を一定程度実践できる水準を測定する試験です。

問題数・試験時間・全45問(学科試験:40問) ・試験時間:60分
試験科目・介護の基本:10問
・こころとからだのしくみ:6問
・コミュニケーション技術:4問
・生活支援技術:20問(実技試験:5問)
・判断等試験等の形式による実技試験課題を出題
実施方法コンピューター・ベースド・テスティング(CBT)方式
受験手数料1,000円程度
合格基準問題の総得点の60%以上
サンプル問題介護技能評価試験サンプル問題

参照:介護分野における特定技能外国人の受入れについて(厚生労働省)

介護日本語評価試験(日本語試験)

介護日本語評価試験は、介護実務におけるコミュニケーションに支障のない水準の日本語能力を測定する試験です。

問題数・試験時間・全15問 ・試験時間:30分
試験科目・介護のことば(5問)
・介護の会話・声かけ(5問)
・介護の文書(5問)
実施方法コンピューター・ベースド・テスティング(CBT)方式
受験手数料1,000円程度
合格基準問題の総得点の60%以上
サンプル問題介護日本語評価試験サンプル問題

参照:介護分野における特定技能外国人の受入れについて(厚生労働省)

国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)

国際交流基金日本語基礎テストは、日本で就労する外国人材が社会生活を送るうえで必要な日本語能力を測定する試験です。

問題数・試験時間・約50問 ・試験時間:60分
試験科目・文字と語彙(約12問)
・会話と表現(約12問)
・聴解(約12問) ・読解(約12問)
実施方法コンピューター・ベースド・テスティング(CBT)方式
受験手数料7,000円
合格基準総合得点が判定基準点(200点)以上
サンプル問題JFT-Basicサンプル問題

参照:国際交流基金 日本語基礎テスト(JFT-Basic)

日本語能力試験(JLPT)

日本語能力試験は、外国人の日本語能力を測定する試験です。日本語レベルに合わせてN1〜N5に分かれており、最も高い日本語力を求められるのがN1です。各介護分野における特定技能の就労ビザを取得するには、N4以上の認定が必須です。

以下はN4の試験科目と問題の構成です。

試験科目・試験時間・言語知識(文字・語彙):25分 ・言語知識(文法)・読解:55分 ・聴解:35分
実施方法コンピューター・ベースド・テスティング(CBT)方式
受験手数料6,500円
合格基準180点満点中90点以上かつ、各パートで基準点以上を満たすこと
サンプル問題JLPTサンプル問題(N4)

参照:日本語能力試験(JLPT)

特定技能「介護」の試験が免除になるケース

特定技能「介護」の就労ビザ取得要件を満たすには、技能試験・日本語試験の合格が条件でが、以下のいずれかを満たす場合は試験が免除されます。

  1. 介護職種の第2号技能実習を「良好に修了」した方
  2. 介護福祉士養成施設を修了した方
  3. EPA介護福祉士候補者としての任期期間(4年間)を満了した方

以下、それぞれの要件を詳しく解説します。

介護職種の第2号技能実習を「良好に修了」した方

技能実習2号を良好に修了(技能実習計画に沿って2年10ヶ月以上修了)した場合は、日本語評価試験が免除されます。さらに、技能実習2号の職種・作業が介護職種に関連している場合は技能試験も免除となります。

介護福祉士養成施設を修了した方

介護専門学校など、介護福祉士養成施設を修了した場合は、日本語能力・介護技能を十分に保有するものとして技能試験・日本語試験が免除されます。一方、養成施設に入るには日本語教育機関で6ヶ月以上の日本語教育を受ける必要があるため、ある程度学習機会に恵まれた留学生が大半となっています。

EPA介護福祉士候補者として在留期間(4年間)満了

EPA介護福祉士の国家試験が不合格となった場合でも、以下の要件を満たす場合は評価試験免除となり、特定技能の就労ビザを取得できます。

  1. 合格基準点の5割以上の得点があること
  2. すべての試験科目で得点があること

受入れ企業の要件

特定技能「介護」の就労ビザを持つ外国人を雇用するには、介護事業所側にも受入れ要件があります。

  1. 介護分野における特定技能協議会へ加入していること
  2. 日本人と同等程度の報酬を支払うこと
  3. 外国人の受け入れに支障のない経営状態であること
  4. 出入国、労働、社会保険、租税に関して法令を遵守していること
  5. 1年以内に外国人材の離職者、行方不明者を出していないこと
  6. 特定技能ビザの外国人を支援できる体制が整っていること

以下、それぞれの要件を詳しく解説します。

介護分野における特定技能協議会へ加入していること

特定技能で外国人材を受け入れる法人・機関は、はじめて特定技能外国人を受け入れた日から4ヶ月以内に「介護分野における特定技能協議会」の構成員になる必要があります。

特定技能協議会とは、構成員同士の連携を図り、各事業者が特定技能外国人を受け入れられるように、制度や情報の周知、法令遵守の啓発など、必要な対応を行う団体のことです。加入手続きの詳しい流れは以下をご覧ください。

参考:介護分野における特定技能協議会 加入の流れ(概要)

日本人と同等程度の報酬を支払うこと

特定技能の就労ビザを持つ外国人を雇用する場合は、日本人従業員と同水準の報酬を支払わなければいけません。同じ業務を担わせているにも関わらず、あきらかに待遇に差を付けたりすることは禁じられています。外国人を雇用する際には、報酬の算出根拠となる日本人の報酬情報を提出する必要があり、勤務開始後も定期的に書類の提出が求められます。

外国人受け入れに支障のない経営状態であること

経営状態が悪化するなどした場合に外国人材が解雇されるのを防ぐために、受入れ企業側の経営状態が良好であることが求められます。もし、特定技能の就労ビザ申請を行う前年度末に債務超過がある場合は、改善の見通しについて評価調書などの書面提出が求められる場合があります。

出入国、労働、社会保険、租税に関して法令を遵守していること

就労ビザの申請を行う過去5年以内に、受入れ企業側が出入国、労働、社会保険および租税に関して法令違反を犯している場合は、外国人の受け入れが不可となります。

1年以内に外国人材の離職者、行方不明者を出していないこと

雇用契約を交わす1年以内に離職者や行方不明者を発生させている場合は、特定技能ビザの外国人を受け入れが不可となります。ただし、受入れ企業側に帰責性のない行方不明の場合や、自発的に退職した場合は該当しません。

特定技能ビザの外国人を支援できる体制が整っていること

受入れ企業側は、単発ではなく継続的に特定技能ビザの外国人材を受け入れていくだけの支援体制が整っていることが求められます。例えば、管理を適正に行っていることや、外国人が十分理解できる言葉で支援しているなどが挙げられます。

特定技能ビザの申請に必要な書類

介護分野における特定技能の就労ビザは、技能試験と日本語試験に合格しただけでは取得できません。試験合格後に「地方出入国在留管理局」に出向き、就労ビザの申請を行う必要があります。

申請には書類作成も含めて期間を要するため、計画的に進めるようにしましょう。介護分野における特定技能ビザの申請に必要書類は以下の通りです。

  1. 介護技能評価試験の合格証明書の写し
  2. 介護日本語評価試験の合格証明書の写し
  3. 日本語能力試験(N4以上)合格証明書の写し、または国際交流基金日本語基礎テスト合格証明書のいずれか
  4. 介護分野における特定技能外国人の受け入れに関する誓約書
  5. 介護分野における業務を行わせる事業所の概要書
  6. 協議会の構成員であることの証明書

一方、試験免除となり、試験合格と同等以上の水準と認められる場合は以下の書類を提出します。

  1. 介護福祉士養成施設修了の場合:介護福祉士養成施設の卒業証明書の写し
  2. EPA介護福祉士候補者として在留期間満了の場合:直近の介護福祉士国家試験の結果通知書の写し

参照:介護分野に関する必要な書類

介護分野における特定技能外国人の受け入れ時に注意すべき点

介護事業者が特定技能の就労ビザを持つ外国人材を雇用することで、人材不足の解消が期待できます。しかし受け入れ時には注意すべき点があります。

  1. 受け入れできる事業所の種類が決まっている
  2. 受け入れ期間・上限が決まっている

それぞれ詳しく解説します。

受け入れできる介護事業所の種類が決まっている

介護分野での特定技能の就労ビザは、介護施設内での食事や入浴の介助など幅広い業務に携わることができます。ただし、すべての介護施設で就業できるわけではありません。

例えば、訪問介護やサ高住(介護サービス付き高齢者向け住宅)などは現行制度では認められていないので注意しましょう。詳しい対象施設は以下の参考情報をご覧ください。

参考:介護分野の1号特定技能外国人を受け入れる対象施設について

受け入れ人数の上限が決まっている

特定技能制度では受け入れ人数に制限はありませんが、例外的に介護分野と建設分野に関しては人数制限が設けられています。介護分野では、「事業所単位で日本人等の常勤介護職員の総数が上限とすること」とされています。日本人「等」とありますが、以下の在留資格で日本に滞在する外国人も常勤介護職員の総数に含めることができます。

  1. 介護福祉国家試験に合格したEPA介護福祉士
  2. 在留資格「介護」により在留する外国人
  3. 永住者や日本人の配偶者など、身分・地位に基づく在留資格により在留する外国人

ただし、技能実習生・EPA介護福祉士候補者・留学生は常勤介護職員の総数に含まれないため注意しましょう。

参照:厚生労働省「特定の分野に係る特定技能外国人受入れに関する運用要領-介護分野の基準について-」

まとめ

本記事では、介護分野における特定技能の就労ビザについて解説しました。特定技能の就労ビザ申請は他の在留資格に比べて提出書類が多く、申請が通ったとしてもその後の受け入れ準備までやることが多岐に渡ります。たたでさえ人手不足のなか、手順を確認しながら自力で進めるにはかなりの負担が強いられるでしょう。

もし特定技能ビザの取得が進まないなどお困りの場合は、登録支援機関に相談することがおすすめです。私たち、さむらい行政書士法人では、介護分野における特定技能外国人の受け入れに関する相談から実務支援まで、ワンストップサービスを提供しています。介護職の外国人材を増やしていきたい方はぜひご相談ください。

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