建設業界の深刻な人手不足の解消に向けて「特定技能制度」の活用に注目が集まっています。しかしながら、そもそも特定技能制度を活用することにどんなメリットがあるのか、具体的なイメージを掴めない方も多いでしょう。
そこで本記事では、数多くの在留資格認定を支援してきた行政書士事務所の観点で、建設分野における特定技能制度について解説します。具体的には、特定技能制度の基礎から、活用のメリット、導入時に注意すべきことまで項目ごとに分けています。
この記事をご覧頂くことで、自分たちが特定技能制度を活用すべきか判断できるようになりますので、ぜひ参考にしてください。
建設業界における特定技能制度の基礎知識
特定技能制度とは、外国人の在留資格の一つです。そもそも、その他の在留資格とは何が異なるのでしょうか。ここでは、特定技能制度の概要を解説します。
特定技能制度とは
特定技能制度とは、労働人口減少に伴う人材不足の解消を目的として、2019年4月より新しく設立された在留資格制度のことです。
特定技能制度では、国内産業における14分野で「真に受け入れが必要と認められる人材不足の分野」と位置づけ、一定の専門性・技能を持つ外国人材の受入れを認めています。
参考:法務省|新たな外国人材の受入れに関する在留資格「特定技能」の創設について
その中で「建設分野」も含まれており、特定技能1号として一定の実務経験と「建設分野特定技能2号評価試験」又は「技能検定1級」に合格することによって、在留期間の更新に上限のない特定技能2号に移行することも可能です。建設分野における外国人の受入れ見込み数は2024年までに40,000人を掲げています。
しかし2020年以降に急速に拡大した新型コロナウイルスによる渡航制限などもあり、現状としては6,360人(令和4年3月末時点)と見込み数を大きく下回っています。2022年現在では渡航制限も徐々に緩やかになってきていますので、今後さらなる増加が見込まれるでしょう。
出典:新たな外国人材の受入れ及び共生社会実現に向けた取組|出入国在留管理庁
外国人材に求められる技能水準
建設分野における特定技能は、国内外で実施される以下の2つの試験に合格した外国人材が対象となります。
- ●技能試験(建設分野特定技能1号評価試験)
- ●日本語試験(国際交流基金日本語基礎テストまたは、日本語能力試験N4以上)
ただし、 以下の要件を満たしている場合は、技能試験・日本語試験が免除されます。
- ●建設職種の第2号技能実習を良好に修了した方
建設業で従事できる仕事
特定技能の建設分野における職種は、2022年8月に業務区分の統合が行われたことで、見直し前の19区分から3区分に統合され業務範囲が拡大されました。また技能実習における職種も上記の3区分で全ての作業が分類されています。
具体的な業務区分については、下記の3区分となりました。
- ●土木区分(コンクリート圧送、とび、建設機械施工、塗装など)
- ●建築区分(建築大工、鉄筋施工、屋根ふき、左官など)
- ●ライフライン・設備区分(配管、保温保冷、電気通信、電機工事など)
具体的な業務区分については以下をご参照ください。
特定技能外国人に実施すべき支援業務
特定技能外国人材を受入れる事業者(受入れ機関)は、円滑な就労・職場定着を目指すことが求められます。
そのうえで、職業生活上あるいは日常生活・社会生活上に必要な支援計画を作成し、実行しなければなりません。
具体的な支援内容としては、以下の10項目が省令で定められています。
- 事前ガイダンス
- 出入国する際の送迎
- 住居確保・生活に必要な契約支援
- 生活オリエンテーション
- 公的手続等への同行
- 日本語学習の機会提供
- 相談・苦情への対応
- 日本人との交流促進
- 転職支援(人員整理等の場合)
- 定期的な面談・行政機関への通報
特定技能外国人を雇用することのメリット
特定技能外国人雇用は建設業者にとってどのようなメリットがあるのでしょうか。主なメリットを5つ紹介します。
メリット①:事業所での受入れハードルが低い
特定技能外国人の受入れは、他の在留資格に比べて制限が少ないことがメリットです。例えば技能実習の場合は、違法就労や劣悪な労働環境などが社会問題化し、規制がどんどん厳しくなっています。
その点、特定技能においては現段階でそこまで厳しい規定はありません。3か月に一度の報告は必要ですが、それ以外の毎月の巡回・監査も不要です。
もちろん、一定の日本語力や技能が必要なので候補者の絶対数は少なくなりますが、受入れ自体のハードルはかなり低いといえます。
メリット②:中長期的な雇用が見込める
特定技能外国人の受入れ期間は最長5年と、技能実習の3年よりも長いことが特徴です。さらに、実務経験や試験に合格をして要件を満たせば、特定技能2号に変更も可能です。特定技能2号では在留期間の更新の上限がないため、5年を超えて継続して就労してもらうことができます。
そのため、受入れ機関は積極的に試験対策をサポートし、長期的に活躍し続けてもらう環境を作ることが大切です。
メリット③:対応可能業務の範囲が広い
2022年8月の業務区分の統合により、業務範囲の拡大が可能になりました。同一区分に含まれる業務にも対応いただくことができるので、若い人材の確保が難しい建設業界において大きなメリットになるでしょう。
特定技能を検討する上で事前に確認すべきこと
特定技能で外国人材の雇用を検討する際には、あらかじめ検討しておくべき事項があります。
チェックポイント①:採用計画を立てているか
特定技能で外国人材を雇用するにあたって、あらかじめ採用計画を立てる必要があります。自社での従業員の確保に向けて必要な人員は何名か、いつまでに採用する必要があるのかといった目標・ゴールを明確にし、そこから逆算していつから募集を掛けるのか、それに向けていつまでに申請が必要なのかなど、タスクに落とし込んでいきます。
このように整理すると意外と時間が足りないことに気づきます。普段の業務の傍らに対応するとなれば、さらに負担も大きくなるでしょう。また、綿密な計画を立てても実際にその通りにいかないことも多いため、余裕を持った計画を立てるようにしましょう。
チェックポイント②:特定技能の受入れ要件を満たしているか
特定技能の受入れ機関(建設業者)とは、満たすべき基準が省令で定められています。
具体的には以下の項目がありますので、それぞれ該当しているか確認しましょう。
- 労働、社会保険及び租税に関する法令を遵守していること
- 1年以内に特定技能外国人と同種の業務に従事する労働者を非自発的に離職させていないこと
- 1年以内に受入れ機関の責めに帰すべき事由により行方不明者を発生させていないこと
- 欠格事由(5年以内に出入国・労働法令違反がないこと等)に該当しないこと
- 特定技能外国人の活動内容に関する文書を作成し、雇用契約終了日から1年以上保管すること
- 外国人等が保証金の徴収等をされていることを、受入れ機関が認識して雇用契約を締結していないこと
- 受入れ機関が違約金を定める契約等を締結していないこと
- 支援に要する費用を直接または間接に外国人に負担させないこと
- 労働者派遣の場合は、派遣元が当該分野に係る業務を行っている者などで、適当と認められる者であるほか、派遣先が1~4の基準に適合すること
- 労災保険関係の成立の届出等の措置を講じていること
- 雇用契約を継続的に更新する体制が適切に整備されていること
- 報酬は預貯金口座への振込等で支払うこと
- 分野に特有の基準に適合すること
各項目で不安な部分がある場合は、あらかじめ専門家に相談することをおすすめします。
チェックポイント③:受入れ体制の整備に専門家を確保しているか
特定技能の受入れ機関(建設業者)は、外国人の就労を迎え入れるために、外国人の生活支援も含めた受入れ体制の整備や支援計画の策定が必要です。
しかし、自社でこれらの専門業務をこなすことは容易ではありません。
自分たちの力だけで、受入れ機関としての要件を満たすことが難しいと感じる場合は、登録支援機関に支援計画の策定を全部委託することが可能です。全部委託することで、外国人剤に関する基準をすべて満たしたとみなされます。
もちろん自分たちで申請することも可能ですが、受入れ後も定期的な報告書類の作成・提出が必要であるため、特定技能に詳しい専門機関を相談先として持っていた方が、万が一の場合でも安心です。
特定技能外国人の雇用手続き業務は、さむらい行政書士法人にお任せください
本記事では建設業界における特定技能制度について基礎から、外国人を雇用するメリット、受入れ時の注意点まで解説しました。
少子高齢化が進む国内では、日本人だけでは人材確保は厳しくなることは明白です。29歳以下の人材構成が1割程度で留まっている今、業務を遂行していく即戦力となる人員として外国人材の活用はとても有効です。
外国人材の受入れは、コミュニケーションの問題や受入れ体制の準備など、課題は多いですが、事業継続のためにも10年先を見据えて、今出来ることからはじめていきましょう。
もし、特定技能外国人材の受入れに興味はあるものの、何からはじめたら良いかわからないとお悩みの方は、お気軽に当事務所にご相談ください。さむらい行政書士法人では、建設業界の特定技能制度の活用に詳しい専門スタッフが数多く在籍していますので、あらゆるお悩み・ご相談に対応いたします。
相談料は無料ですので、いつでもお問い合わせください。