「建設業で外国人を雇用するには特定技能ビザが必要と知ったが、何から初めていいかわからない」「取得する際の注意点を知りたい」このような疑問をお持ちの方は少なくありません。
特定技能ビザは、2019年4月に開始した就労ビザ制度のことで、一定の専門性や技能を持つ外国人材を即戦力として雇い入れることができます。
本記事では、建設業における特定技能ビザの取得方法や取得要件、注意点などについて詳しく解説します。外国人材を雇用して人手不足を解消したい事業者様はぜひ参考にしてください。
建設業で外国人材を受け入れることができる制度
次のいずれかを取得している外国人に限り、建設事業所において受け入れることができます。
特定技能「建設」
建設業において必要な知識・技能を有しており、即戦力として働ける外国人材に与えられる資格です。
技能実習2号の良好な修了、または建設分野の技能試験や日本語試験への合格が必要です。
技能実習
技能実習は、日本企業や個人事業主のもとで働き、出身国では習得が難しい技能の習得・習熟・熟達を目的とした制度です。
人材不足による労働力確保の目的で採用することはできません。
在留資格「技術・人文知識・国際業務」
在留資格「技術・人文知識・国際業務」は、従事する業務に関連した大学もしくは専修学校を卒業するか、10年以上の実務経験が必要です。
そのため、他の資格と比べて該当者が少なく、採用する難易度が高いでしょう。
身分に関する資格
「定住者」「永住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」が該当します。これらを取得している外国人には就労制限がありません。
特定技能「建設」の基礎知識
上記、解説した制度の中でも、即戦力として外国人材を雇用しやすいのは特定技能「建設」です。特定技能「建設」には次の区分があります。
※令和4年8月30日の閣議決定によって業務区分は19区分から3区分に統合されています。
業務区分
No | 業務区分 | 対応業務例 |
1 | 土木 |
型枠施工/コンクリート圧送/トンネル推進工/建設機械施工/土工/鉄筋施工/とび/海洋土木工/その他、土木施設の新設、改築、維持、修繕に係る作業 |
2 |
建築 |
型枠施工/左官/コンクリート圧送/屋根ふき/土木/鉄筋施工/鉄筋継手/内装仕上げ/表装/とび/建築大工/建築板金/吹付ウレタン断熱/その他、建築物の新築、増築、改築若しくは移転、修繕、模様替又は係る作業 |
3 | ライフライン・整備 |
電気通信/配管/建築板金/保温保冷/その他、ライフライン・設備の整備・設置、変更又は修理に係る作業 |
例えば、土木の技能評価試験に合格すると「土木」に該当する業務に従事できます。それでは、特定技能「建設」を持つ外国人の推移や取得要件、試験の詳細について解説します。
特定技能在留外国人数の推移
出典:厚生労働省「特定技能制度運用状況等について」
建設分野における特定技能を持つ外国人数は、令和2年から令和3年12月末にかけて少しずつ増加しています。
少子高齢化の影響による人材不足が叫ばれる中、今後も特定技能外国人のニーズが増加することが見込まれます。
特定技能資格の取得要件
特定技能「建設」を取得するには、次の試験に合格する必要があります。
- 建設分野特定技能1号評価試験
- 日本語試験(国際交流基金日本語基礎テストまたは日本語能力試験のN4以上)
試験に合格後、「地方出入国在留管理局」で就労ビザ(在留ビザ)を申請します。
建設分野特定技能1号評価試験
建設分野特定技能1号評価試験は、一般社団法人 建設技能人材機構が実施しており、学科試験と実技試験があります。
学科試験 |
実技試験 ※()内は新区分の土木・建築・ライフライン・設備の場合 |
|
問題数 |
30問 |
職種毎に定める(20問) |
試験時間 |
60分 |
職種毎に定める(40分) |
出題形式 |
真偽法(○×)および2~4択式 |
真偽法(○×)および2~4択式 |
実施方法 |
CBT方式 CBT操作体験版 |
作業試験、判断試験等から職種毎に定める(CBT方式) |
合格基準 |
合計点の65%以上 |
職種毎に定める(合計点の65%以上) |
出典:一般社団法人建設技能人材機構「建設分野特定技能1号評価試験情報と申込み」
国際交流基金日本語基礎テスト
国際交流基金日本語基礎テストは、日本語能力水準を図ることを目的とした国際交流基金が実施する試験です。
問題数 |
約50問 |
試験時間 |
60分 |
出題形式 |
真偽法(○×)および2~4択式 |
実施方法 |
CBT方式 |
日本語能力試験(N4以上)
日本語能力試験は、N1~N5の5段階に分かれており、数字が大きくなるほどに高い日本語能力が求められます。
特定技能「建設」を取得するには、N4以上の試験への合格が必要です。試験内容と試験時間は定期的に変更されますが、令和4年時点では次のようになっています。
- 言語知識(文字・語彙)……25分
- 言語知識(文法・読解)……55分
- 聴解……35分
日本全国47都道府県と、世界中の国・地域で受験できます。
特定技能ビザの申請に必要な書類
特定技能「建設」を取得するには、試験に合格後に「地方出入国在留管理局」へ以下の書類を提出し、就労ビザを申請する必要があります。
- 「希望する業務区分に応じた建設分野特定技能1号評価試験の合格証明書の写し」もしくは「希望する業務区分に応じた技能検定3級の合格証明書の写し」
- 「日本語能力試験(N4以上)の合格証明書の写し」もしくは「国際交流基金日本語基礎テストの合格証明書(判定結果通知書)の写し」
- 建設特定技能受入計画の認定証の写し
- 建設分野における特定技能外国人の受入れに関する誓約書
受け入れ企業の要件
特定技能「建設」を持つ外国人を雇用するには、適正な労働環境の維持・管理が必要です。
適切に配慮することを照明するために、国土交通省へ「建設特定技能受入計画」を提出し、認定を受ける必要があります。
建設業界で外国人を雇用する際は、適正な労働環境の維持・管理が求められます。
そこで、外国人労働者への適切な配慮を目的とする「建設特定技能受入計画」を作成し、国土交通省へ提出・認定を受ける必要があります。主な認定要件は次のとおりです。
- 建設業許可を取得している
- 建設技能人材機構(JAC)に所属
- 建設キャリアアップシステムへの登録
- 建設特定技能受入計画の申請の日から前5年以内またはその申請の日以降に、建設業法に基づく監督処分を受けていない
- 建設特定技能受入計画の認定申請
なお、建設技能人材機構(JAC)に対し、毎月「受け入れ負担金」を支払うほか、JACまたはJACの正会員の建設業者団体の会費、登録支援機関委託費用なども発生します。
まとめ
本記事では、特定技能「建設」の取得方法や申請方法、受け入れ企業の要件などを解説しました。
特定技能の取得には複数の試験への合格や多くの提出書類の用意が必要です。人手不足の中、このような申請を行うことには大きな負担がかかるでしょう。
もし、特定技能ビザの取得が思うように進まない場合は、登録支援機関への相談がおすすめです。
私たち、さむらい行政書士法人では、建設分野における特定技能外国人の受け入れに関する相談から申請書類の準備、提出支援まで、トータルサポートしております。
建設業において外国人材の受け入れを検討している方は、ぜひ一度ご相談ください。